シングルマザーの子育て 〜小学校生活編 ①〜

教育・子育て

37冊のノートが教えてくれたこと

毎日やってくる【あの時間】

小学校1年生の幕開けと同時に、我が家には避けて通れない「新・日課」がやってきました。
そう、「宿題」です。

中でも強烈な存在感を放っていたのが【漢字ノート】
ルールは至ってシンプル。毎日1ページ、国語の教科書から漢字を自分で選んで、ひたすら書く。……たったそれだけ。
たったそれだけのはずなのに、これがもう、終わらないのです。

親子で挑む「夜の修行」

まず「ピックアップ」でつまずきます。どの漢字を選べばいいのか分からない。選んだとしても、指先に力が入らずうまく書けない。
書けたとしても、マス目からはみ出したバランスは壊滅的……。
気づけば、親子で一冊のノートを挟んで無言。時折こぼれる重いため息。そして、消しゴムのカスを散らしながらの書き直し。
正直に言うと、これはもう勉強というより、母子で挑む【修行】でした。

しかもこの修行、タイミングが絶妙に悪いのです。

学童が終わり、スーパーで買い物をして帰宅。そこから戦場のような夕飯の支度、洗濯、翌日の準備……。
ようやく一息つきたい時間に、あのノートが「僕の番だよ」と言わんばかりに静かに待っている。
「今日はもう、やらなくていいかな……」
そんな甘い誘惑が、毎晩のように耳元でささやきます。

シングルマザーとして仕事と家事をひとりで回しながら、睡魔と戦う我が子と漢字ノートに向き合うのは、体力的にも精神的にも、じわじわと削られるものがありました

「やるなら、とことん」と腹をくくる

でも、ここで私が根を上げるわけにはいかない。「親が疲れているから」という理由で、息子に【やらなくていい理由】を教えるのは違う。
そう思い、ある夜、静かに腹をくくりました。
「やるなら、とことん付き合おう」
とはいえ、現実は理想通りにはいきません。眠い、疲れた、進まない。親も子も感情がささくれ立ち、ぶつかる夜もありました。
情けなくて、静かに涙がこぼれた夜も、正直ありました。

それでも投げ出さずに泥臭く続けたその先に、ふとした驚きが待っていたのです。

ゴールデンウィーク明け。つまり、始めてからたった一ヶ月足らずのことでした。
「あれ?」
ふと気づくと、息子が一人でノートを開いているのです。
自ら漢字を選び、鉛筆を走らせ、一文字ずつページを埋めていく。あんなに苦しかった【修行】の時間が、いつの間にか穏やかな日常の一部へと溶け込んでいました。

こどもの順応性とは、なんと凄みがあるのでしょう。大人が勝手に決めた限界より、彼らの成長はずっと先を走っていました
丸くなった背中を見つめながら、込み上げてくる誇らしさを隠せませんでした。

習慣が「呼吸」に変わるまで

きっと担任の先生は、こうなることを予見していたのでしょう。長年の経験がもたらす「見通し」の深さに、今更ながら脱帽しました。
そしてこの漢字ノート、実はここで終わりではありません。むしろ、本番はここからでした。

この習慣はなんと小学校卒業後の3月31日まで、一日も欠かさず続いたのです。土日も祝日も、毎日毎日続いたのです。
積み上げたノートの数は、合計37冊
もはや「やる・やらない」の選択肢すら存在しない、呼吸と同じレベルの【当たり前】になっていました。

途中、担任が変わったタイミングで「もう高学年だし、終わりにしてもいいのでは?」という空気もありましたが、我が家は即、却下。
一度ついた良質な習慣は、もはや「やめどき」が見つからないほどの宝物になっていました。

37冊が教えてくれたこと

結果として、この泥臭い積み重ねは、確実に「その後」の彼を支える強固な背骨となりました。
まず驚いたのが、受験期です。あの漢字ノートで基礎体力がついたのか、「一度机に座ったら最後、石像かと思うほどの集中力」を発揮。
親の私が「ちょっとは休憩したら?」と心配して声をかけるまで、自分のペースで淡々と、かつ猛烈に課題を片付けていく姿がありました。一瞬の爆発的な頑張りではなく、「毎日決まった量をこなす」という筋力が、いつの間にかプロ級に仕上がっていたのです。

そしてその「鉄の習慣」は、大学生になった今でも現役

朝、静かに机に向かって自分のペースでやるべきことを進める彼の後ろ姿を見ていると、ふと気づかされるのです。
「あ、これ、私が教えたことだったっけ……?」と。
「背中」に追い越される幸せ

さらに予想外だったのは、その影響が私にまで波及したこと。
かつては「早く終わって寝かせて!」と半泣きで消しゴムを動かしていた私ですが、今では横でコツコツ勉強する息子の姿に、すっかり感化されています。

「息子があれだけやってるんだから、私も負けていられないな」
そんな妙な対抗心が火をつけ、おかげさまで私のデスクワークや勉強も、かつてないほど捗るようになりました。
まさか、あの時の「漢字の書き直し」が、十数年後に「親のやる気スイッチ」として返ってくるとは……。人生、何が功を奏するか分からないものです。

……とはいえ。当時の、必死に睡魔と戦っていた私に一言だけ言えるなら、やはりこれに尽きます。
「未来のあなたは息子にインスパイアされてバリバリ勉強してるけど、とりあえず『今』は1秒でも早く終わってほしいよね!」(笑)

今でもその先生のことは、親子で折に触れて思い出します。あの37冊のノートは、今も私たちの記憶の特等席に、誇らしく並んでいます。
一年生の思い出は、まだまだここから続きます。

次回は健康診断と運動会です。

厚木市議会議員:望月 真実(もちづきまみ)

私が考える子育て Vol,4

TOP