「専門職を増やせ」と言う前に

教育支援

放課後等デイサービスの【人材不足】を、本気で考える

放課後等デイサービスは「預かり」から「専門支援」へ

近年、放課後等デイサービスの制度は大きく変わってきました。
2021年度(令和3年度)には「専門的支援加算」が創設され、2024年度(令和6年度)の制度改定ではさらに、

◆ 専門的支援体制加算
◆ 専門的支援実施加算

へと制度が再編されました。

▼令和3年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容▼
https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000752273.pdf?utm_source=chatgpt.com

理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)、心理職など、専門職を配置し、個別支援を行う事業所を高く評価する方向へ舵が切られています。
この方向性そのものは、私は間違っていないと思っています。

発達特性のある子どもたちへの支援は、年々多様化・高度化しています。
保護者の悩みも複雑化しています。

放課後等デイサービスも、単なる「預かり」ではなく、

◆ 個別療育
◆ 言語支援
◆ 感覚統合
◆ 行動支援
◆ 家族支援
◆ 学校連携

など、高い専門性が求められる時代になっています。

専門職を増やせ-1

しかし現場は「その専門職がいない」

ここで、大きな矛盾が。
国は、「専門職を配置してください」と言う。
でも現場は、「その専門職がいません」と悲鳴を上げているのです。

まるで、
【水が足りない畑に、もっと作物を植えてください】
と言われているような感覚です。
もちろん国も何もしていないわけではありません。

◆ 処遇改善加算
◆ 資格取得支援
◆ 教育訓練給付制度

など、一定の支援制度は存在しています。
専門職を配置した事業所には報酬加算もあります。

「お金を出せば人が来る」は本当に正しいのか

ただ、私はこの流れに少し危うさも感じています。
最近の制度設計は、

「人が足りない」
   ↓
「お金を出す」
   ↓
「人が集まるはず」

という発想が強すぎるように見えるのです。
もちろん待遇改善は必要です。むしろ絶対に必要です。
しかし、人材育成というものは、そんな単純な話ではありません

専門職は【来年から増える】仕事ではない

例えばST(言語聴覚士)。

資格取得には● 養成校
● 実習
● 国家試験

が必要で、数年単位の時間と高額な学費がかかります。
「来年度から必要です」と言われても、翌年に急増する職種ではありません。

これは保育士も同じです。

さらに放課後等デイサービスでは● 送迎
● 学校との連携
● 保護者対応
● 記録
● 行動支援
● 緊急対応

など、かなり高い総合力が求められます
にもかかわらず、
「やりがい」で支えてきた部分が長く、専門性に対する社会的評価や給与水準が十分だったとは言えません

結果として、

◆ 病院
◆ 高齢者分野
◆ 一般企業

などへ人材が流れていく。
これはある意味、自然な流れです。

専門職を増やせ-2

本当に必要なのは「どう育てるか」

「専門性を高める」という議論と同時に、「どう育てるか」を数年単位、いや10年単位で考えなければならないと思っています。

例えば● 地域の高校生への福祉教育
● 奨学金制度
● 地元就職支援
● 働きながら資格取得できる環境
● 実習受け入れ支援
● 子育て世代が働きやすい職場づくり
● キャリアアップの見える化

こうした【入口】への投資がなければ、制度は必ずどこかで歪みます

すでに始まっている悪循環

今の放デイ業界では、既にその兆候が見え始めています。
専門職加算を取りたくても、人が採れない。
採れないから既存職員へ負担が集中する。
疲弊して離職する。
さらに人が減る。
この悪循環です。

残念ながら現状では「基準強化=事業継続困難」になりかねません。
それは最終的に、【支援を必要としている子どもが、地域で支援を受けられない】という問題につながります。

厚木市の現状と支援制度

現時点で、「放課後等デイサービス専門職」に特化した大型支援制度は確認できません

現在は主に、

◆ 保育士確保策
◆ 幼稚園教諭支援
◆ 子育て人材確保策
◆ 神奈川県制度
◆ 国制度

を組み合わせている状況です。

厚木市の主な支援策一覧

保育士向け支援◎ 保育士奨学金返済助成金
→ 年最大20万円、最長3年
◎ 保育士転入奨励助成金
→ 市外転入者へ上限20万円
◎ 保育士復職等奨励助成金
→ 復職者へ一律10万円
◎ 保育士等就労応援給付金
→ 年間最大50万円
幼稚園教諭向け支援◎ 幼稚園教諭等就労応援給付金
→ 年15万円、最長5年
◎ 幼稚園教諭助成制度
→ 転入・奨学金・復職支援
県・国の制度◎ 神奈川県 地域限定保育士試験
◎ 保育補助者雇上強化事業
◎ 国の専門実践教育訓練給付
◎ 処遇改善加算

などがあります。

しかし、放デイ専門職支援はまだ弱い

「保育士確保策は比較的充実している」が、一方で
「放課後等デイサービス専門職」に特化した支援はまだ弱いことです。

特に不足が深刻な、

◆ ST(言語聴覚士)
◆ OT(作業療法士)
◆ 心理職

向けの自治体独自支援は、現時点では確認が難しい状況です。

全国で起きている【制度と現場のねじれ】

厚木市に限らず全国的に

◆ 専門性を求める
◆ 配置基準を強化する
◆ 加算制度を細分化する

一方で、

◆ 養成校不足
◆ 実習先不足
◆ 現場負担増
◆ 若手流出

が起きています。
つまり、
「制度は高度化しているのに、人材育成政策が追いついていない」
状態です。

これから本当に必要なのは「地域で育てる仕組み」

今後必要なのは、単なる「人材募集」ではありません。
本当に必要なのは、【地域で育てる仕組み】だと思います。

例えば● 高校・大学との連携
● 地元就職型奨学金
● 放デイ専門職育成補助
● ST・OT養成支援
● 子育て世代向け柔軟勤務
● 実習受入支援
● キャリア形成の見える化

など。

特に障がい児支援は、
「制度を作れば人が来る」
では成立しにくい分野
です。

専門職を増やせ-3

「この仕事に憧れる人」を増やせるか

私は、放課後等デイサービスの議論は、

◆ 不正を防ぐ
◆ 専門性を高める

だけでは足りないと思っています。
本当に必要なのは、
【この仕事に憧れる人を増やせる社会】
をつくることではないでしょうか。

子どもたちの未来を支える仕事が、

◆ 尊敬される
◆ 続けられる
◆ 誇りを持てる

そんな環境にならなければ、制度だけを積み上げても持続しません。
何事も、多方向から、数年単位で考える。
福祉こそ、その視点が必要だと強く感じています。

厚木市議会議員:望月 真実(もちづきまみ)

 

 

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