野球と親子と、【選び方】の話
先日、ある出会いがありました。
プロの世界を知り尽くした方々が、こどもたちに野球を“教える”新しい形を創造していました。
その姿に触れたとき、
胸の奥にしまっていた感情が、動き出してしまいした。息子の野球人生の「あの頃の記憶」が、鮮明によみがえりました。
当時、私たち親子が悩み、迷い、向き合った時間。そのすべては決して特別なものではなく、どの家庭にも起こりうる、ごく自然な過程なのだと思います。
だからこそ、思うのです。
もし、あの時…
ほんの少しでも早く、外の世界や、本物に触れる「きっかけ」があったなら。
選択は変わらなかったかもしれない。
けれど、見えていた景色は、確実に違っていたはず。
その一歩が、こどもの選択そのものではなく、【選び方】を変えていたのかもしれません。

元横浜DeNAベイスターズ石川選手と後藤選手が市長に表敬訪問
こどもが夢中で白球を追いかける姿は、どうしてあんなにも親の心を揺さぶるのでしょうか。
泥だらけのユニフォーム、あふれる悔し涙、仲間と分かち合う弾けるような笑顔。
そのすべてが愛おしくて
気づけば、「もっと上を目指せるのではないか」と、親のほうが先に夢を膨らませている。
けれど同時に、心の奥では、ずっと消えない問いがありました。
「このまま進んで、本当に大丈夫なのだろうか」
なぜ、そんな不安が消えなかったのか。
それは、監督や指導者からかけられる
「この子は伸びる」「いける」
という言葉が、想像以上に親の心を揺らし、期待を加速させたからです。
嬉しいはずの言葉が、いつの間にか“判断を鈍らせる熱”にもなっていく。
その感覚に、どこかで気づいていたのだと思います。
調べれば調べるほど突きつけられる現実
息子が本気で野球に向き合い始めた頃、私たちは親子で「プロの世界の現実」を徹底的に調べました。
◆ その中で一軍に定着できる確率
◆ 「花形選手」と呼ばれる存在になれる確率
さらに、現役でいられる年数、引退後の人生。
調べれば調べるほど見えてきたのは、夢の輝きではなく、圧倒的な「現実の厳しさ」でした。
ほんの一握りの成功の裏に、数えきれないほどの「そうではなかった現実」がある。
それでも
「夢なんて現実的じゃないからやめなさい」
その一言だけは、どうしても口にできませんでした。
「軟式」という選択、それでもつながった可能性
悩みに悩んだ末、中学では「部活動(軟式野球)」を選びました。
理由はシンプルです。
学業との両立、費用、生活のバランス。
「現実を見据えた選択」でした。
けれどその裏側で、ずっと消えなかった思いがあります。
「この選択が、可能性を狭めてしまうのではないか」
そんな不安を抱えたまま迎えた、中学3年生の夏。
息子は県央選抜に選ばれ、
東海大学付属相模高等学校の合同練習に参加する機会をいただきました。
名門校のグラウンドに立つその姿を見た瞬間、嬉しくて小躍りする私がいました。同時に少し緊張感もあり、ドキドキしていたのを覚えています。
「ここまで来たんだ」
「もしかしたら、この先もワンチャンあるのかも」
期待と不安が、一気に押し寄せてきました。
当時、指揮を執っていたのは門馬敬治監督。その名前だけで、夢は一気に現実味を帯びてきます。
同時に、親子の葛藤も一気に深まりました。




親だけが知った「もう一つの現実」
練習後、保護者に向けて行われた説明。
それは、想像していた「夢の続き」ではありませんでした。
● 決して軽くない費用負担
● 休みなく続く厳しい練習
● 全国から集まるトップ選手との競争
そのすべてが、
「夢の裏側にある現実」を突きつけてきました。
息子を乗せて帰宅する車の中、私はほとんど言葉を失っていました。
あの夜の、長すぎた話し合い
家に帰り、息子と向き合いました。
野球か、勉学か……
そんな単純な話ではありません。
「これからどう生きるのか」
気づけば、何時間も話し続けていました。
親としては、どんな道でも応援したい。
でも、そのどれもが「覚悟のいる選択」だと分かっている。
だからこそ、
背中を押すことも、止めることもできない。
その夜、親としての葛藤は、間違いなく頂点に達していました。
「自分で選んだ」という強さ
最後に息子が出した答えは、
「勉学を優先する」というものでした。
その瞬間、ほんの少しだけ寂しさがよぎったのは事実です。
けれどそれ以上に、
自分の人生を自分で決めたその顔には、
確かな強さがありました。
だから私は、その選択を迷わず受け止めることができました。
「もしも」の景色と、それでも残ったもの
息子が高校2年生だった春。
選抜高等学校野球大会で、東海大相模が全国優勝を果たしました。
テレビの中で広がる歓喜の輪。
「もし、あの時違う道を選んでいたら…」
その「もしも」が、胸をかすめます。
それでも、不思議と後悔はありません。
あの時、逃げずに向き合ったから。
本気で考え、本気でぶつかって出した答えだから。
正解かどうかは分かりません。
でも、「自分で選んだ道を生きている」
その事実だけは、何よりも強い支えになっています。
親としての本音
それでも、あえて言うなら。
今でも、ふと思うことがあります。
あの一番熱中していた時期に、部活動の枠を超え、
もっと早く外の世界を見せてあげていたら
もっと高いレベルに触れさせてあげていたら
未来は違ったのだろうか、と。
答えはありません。
けれど、その問いが消えることもありません。
それもまた、親であるということなのだと思います。
夢を、「現実ごと」支えるということ
部活動か、クラブチームか。
硬式か、軟式か。
選択肢はいくつもあります。
けれど最後に思うのは、親にできることは意外と限られている、ということです。
環境を整えること。
情報を示すこと。
そして
子どもが選んだ道を、丸ごと引き受けること。
夢は、全力で追っていい。
ただし、その先にある現実から、目を逸らさないこと。
あの濃密な葛藤の日々は、間違いなく、人生で一番深く向き合った「対話の時間」でした。
だから今、胸を張って言えます。
あの時間こそが、私たち親子の「土台」だったのだと。

そして今、あらためて思うこと
野球を「やるかどうか」ではなく、野球に「出会う機会」をどうつくるか。
その視点こそが、
これからのこどもたちにとって、そして親にとっても、大切なのではないかと。
すべての子どもが、同じ道を目指す必要はありません。
けれど、本物に触れ、自分で感じ、自分で選ぶ。
その経験だけは、きっとどんな道にもつながっていく。
あの頃の想いは、過去のものではなく、こうして、次の世代へと静かに受け継がれていくのだと思います。
厚木市議会議員:望月 真実(もちづきまみ)

セブンステージ ベースボール アカデミー
「VII STAGE BASEBALL ACADEMY(セブンステージ ベースボール アカデミー)」は、
元プロ野球選手による直接指導を受けられる、本格的な野球アカデミーです。
※GM 石川 雄洋
(2005〜2020横浜DeNAベイスターズ 初代キャプテン)
※打撃コーチ 後藤 武敏
(2003〜2011埼玉西武ライオンズ) (2012~2018横浜DeNAベイスターズ) (2019~2025東北楽天ゴールデンイーグルス打撃コーチ)
※投手コーチ 武藤 祐太
(2011〜2017中日ドラゴンズ) (2018〜2021横浜DeNAベイスターズ)
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