小学生の就寝時間を考える
20時の消灯が生んだ「自律」と「背徳の金曜日」
子育ての悩みは尽きませんが、中でも多くの親御さんを一番悩ませるのは「寝かしつけ」問題ではないでしょうか。
「さぁ、お布団行こうか!」
「あとちょっとだけ!」
「明日の準備は終わってるの!?」
「歯磨きした!?」
夜な夜な繰り返されるこのバトル。身に覚えがある方も多いはずです。
私もかつては毎晩この「呪文」を唱えていました。おまけに添い寝で一緒に寝落ちしてしまい、深夜2時に「……あ。」と絶望しながら目覚めるという、もはや修行のような日々を送っていたのです。
しかし、息子の小学校入学を機に、私はある決断をしました。
「指示する親を、卒業しよう」と。

「やったの?」をやめた日
入学前、息子と真剣な「家族会議」を開きました。議題はひとつ。「一人で寝られるか否か」です。
結果、息子は「できる」と宣言。私は「じゃあ、任せたよ」と返し、その日から「20時就寝ルール」がスタートしました。
ここで私が徹底したのは、「親が一切追い立てないこと」。
「もうすぐ20時だよ!早くしなさい!」と急かされた子供は、時計を見るのではなく、親の顔色(と怒りのバロメーター)を見て動くようになってしまいます。これでは時間管理をしているのは親であって、こどもではありません。
目指したのは、息子が自ら時計を見て「あ、やばい。あと30分しかない」と気づける環境づくり。
だから、私はあえて何も言いません。「宿題やったの?」も「時間割は?」も封印。ただ無言で時計を見るか、自分の家事をせっせとこなすかのどちらかです。
すると不思議なことに、息子は母親の動きをよく観察するようになりました。私がキッチンを片付け、バタバタと動き始めると、何かを察したように「あ、やばい」と動き出す。
自分で時間割を確認し、ランドセルを整え、洗面所へ消えていく。私は一切、ノータッチです。
忘れ物があっても、困るのは本人。こどもに任せる育児には、親の「見守る覚悟」が必要なのだと痛感しました。
数ヶ月も経つ頃には、「20時に間に合わせるには、19時には宿題を始めなきゃいけない」という逆算思考が自然と身についていました。大人顔負けのタスク管理能力を、図らずも習得したのです。
思わず笑ってしまったのは、寝る準備を完璧に済ませてテレビを眺める後ろ姿です。
番組が終わる19時55分ごろ、彼は何度も何度も時計をチラつかせます。一分一秒でも長く見ていたいのでしょう、最後の5分間はテレビにかぶりつきの「正座」スタイル(笑)。
それでも、20時ちょうどにはパチっとテレビを消し、「おやすみ〜」と部屋に入っていく。その潔くも素直な姿を見ると、つい「今日はあと10分起きてていいよ」なんて、ご褒美タイムをプレゼントしたくなることもありました。

ドア一枚が、魔法だった
20時就寝と同時に断行したのが、「添い寝の廃止」です。
それまでの私は、暗い部屋で息子が眠るまで隣でじっと待ち、そのまま自分も沈没……。深夜に冷えたリビングで後悔する夜を何度繰り返したことか。
しかし、息子はもう小学生。立派な一人の人間です。
「今日からはドアを開けておくね。廊下の明かりも見えるし、ママの声も聞こえるから大丈夫だよ」
そう伝えて、寝室のドアをあえて全開にしました。
これが、意外にもあっさり効きました。
完全な暗闇と静寂は、こどもにとって「孤独」そのものです。でも、リビングから漏れる光と、食器がカチャカチャと鳴る生活音は、「近くに誰かいる」という強烈な安心感を与えてくれます。
ドア一枚分の隙間と、洗い物の音。それだけで、彼は添い寝を手放すことができたのです。

19時50分、儀式が始まる
習慣とは恐ろしいもので、数ヶ月経つと何も言わなくても19時50分には「儀式」が始まるようになりました。
洗面所から聞こえるシャカシャカという歯磨きの音。トイレの水が流れる音。そして「おやすみなさい……」と少し名残惜しそうに呟いて、自分の部屋に消えていく1年生の背中。
その光景は、親としては少し寂しくもあり……同時に心の中で「よし、勝った!!」とガッツポーズする瞬間でもありました。
20時以降は、完全なる「大人の時間」。
当時会社を経営していた私は、この静寂の中で翌日の予定確認やメール、資料作成に集中することができました。この2時間が、どれほど貴重な救いだったことか。
ちなみにこのルーティン、形を変えながらかれこれ15年ほど続いています。
今でも夜20時から22時になると、私の頭が自然と仕事モードに切り替わるのは、息子がプレゼントしてくれた習慣かもしれません。
金曜日だけは、何でもあり
とはいえ、365日ストイックでは息が詰まります。
そこで生まれたのが、「金曜日の夜更かし」という名の聖域です。
この日だけは、20時の掟が完全消滅します。
「今日は何時に寝てもいいよ。好きに過ごしてOK!」
この一言を聞いた瞬間の、息子の目。キラキラを通り越して、もはや「ギラギラ」です。
金曜夜の特別ラインナップは、まさに背徳の味。
◆ 深夜に食べるカップラーメン(罪悪感が最高のスパイス)
◆ お風呂上がりのアイスクリーム
◆ 漫画の大人読み
◆ ゲームのぶっ続けプレイ
「ママ、まだ起きてていいの?」
「いいよ、今日は金曜日だからね」
この合言葉を交わすとき、息子は本当に誇らしげで、嬉しそうでした。
普段の規律があるからこそ、この解放感は格別。ルールは破る時が一番楽しい。規律と自由はセットで機能するものなのだと、金曜の夜が教えてくれました。
(もっとも、意気込んだ私の方が先にダウンして「ごめん、ママ先に寝るわ……」と脱落するのもお約束でしたが……。)
息子の執念は、深夜0:00ごろには電池切れとなっていました。笑
ルールは「自由」を楽しむためにある
20時就寝は、こどもを縛るためのルールではありません。
むしろ、「自由を最大限に楽しむための土台」です。
低学年のうちにこのリズムを確立したことで、息子は「自分の時間をコントロールする楽しさ」を覚えていきました。成長とともに寝る時間は遅くなりましたが、「やるべきことを終わらせて、自分の時間を確保する」というマインドは、今も彼の中に生きています。
もし今、毎晩の寝かしつけバトルに疲弊している方がいたら、まずは「ドアを全開にして、生活音をプレゼントする」ことから始めてみてください。
そして金曜日の夜には、親子でカップラーメンを啜りながら、とびきりの夜更かしを。
怒られない夜食は、きっと少しだけ特別な味がするはずです。

【あとがき】
金曜夜更かしの代償として、土曜の午前中が毎週消滅していたのはご愛嬌。
それもまた、「休日の使い方」という大切な勉強である……と、自分に言い聞かせていたのでした。
https://kosodatemap.gakken.jp/life/health/99599/amp/
厚木市議会議員:望月 真実(もちづきまみ)