私が考える子育て vol.5

教育・子育て

「小1の壁」は教室でも起きている?

親子で乗り越えるための「給食・運動」処方箋

小学校への入学は、親子にとって輝かしい門出であると同時に、「小1の壁」という大きな試練の始まりでもあります。
一般的に「小1の壁」といえば、学童保育の待機児童問題や、保育園時代よりも早まるお迎え時間など、親の働き方に関する文脈で語られることが多い言葉です。
しかし、実際に壁にぶつかるのは親だけではありません。子どもたちもまた、新しい環境の中で、家庭や保育園では気づかなかった「生活技術の壁」に直面しています。

最近注目されている給食と運動にまつわる「できない」を切り口に、家庭でできる対策と、こどもが自信を持って学校生活を送るためのヒントを深掘りします。

1.「小1の壁」は、指先に現れる

環境の激変という正体

「小1の壁」の正体のひとつは、生活環境の激変です。保育園では先生が手厚くサポートしてくれましたが、小学校では「自分のことは自分でする」が基本
特に給食の時間は、限られた時間(約20分程度)の中で準備・食事・片付けをすべてこなさなければならず、子どもたちにとっては非常にハードルの高いミッションです。

最近の傾向として顕著なのが、指先の巧緻性(器用さ)を必要とする動作でのつまずきです。
一見些細に見えるこれらのつまずきが、給食の時間に焦りや劣等感につながり、学校嫌いの一因になることさえあります。

 給食で直面する、意外な「できない」の壁

 果物の皮がむけない(バナナ・みかん)カットフルーツやパウチゼリーが普及したことで、丸ごとの果物に触れる機会が減っています。「中学1年生でバナナの皮がむけない」というエピソードが話題になるほど、子どもたちの経験の差は広がっています。
 ゆで卵の殻がむけない驚くべきことに、「ゆで卵をむく練習」を宿題として出す学校もあります。殻を少しずつ剥がすという、指先の力加減を繊細にコントロールする経験が、現代の子どもたちには圧倒的に不足しているのです。
 魚の骨が取れない「骨取り済み」の切り身は忙しい親の味方ですが、一方で「箸を器用に使って骨を取り除く」という学習機会を奪っている側面もあります。給食で焼き魚が出ても、どこから手をつければよいかわからず、手で触ってしまう子も少なくありません。
 牛乳パックのストローが取り出せない薄いビニールを剥がす、小さな穴に正確にストローを差し込む――大人には無意識にできることが、子どもには精密機械を扱うような難作業です。毎日の給食で行う動作だからこそ、スムーズにできないと大きなストレスになります。

2.なぜ「できない」子が増えているのか

効率化・利便性という恩恵の、もうひとつの顔

現代の食品加工技術は素晴らしく、ほぼすべての食材が「すぐ食べられる状態」で手に入ります。忙しい共働き世帯にとって、下処理済みの食品は文字どおりの救世主です。
しかしその便利さと引き換えに、子どもたちが自然に指先を鍛えるチャンスは静かに失われています。これは誰かの怠慢ではなく、社会全体の構造的な変化といえるでしょう。

「先回り」という名の愛情が生む、もどかしさ

「時間がかかるから」「汚れるから」と、親が代わりにやってあげてしまう…これは紛れもない愛情です。しかし学校には、その「魔法の手」はありません。
先生一人が30人以上の子どもをサポートするには限界があります。「先生、できない!」と行列ができる教室で、子どもは焦りを感じてしまいます。

愛情と「待つこと」は矛盾しません。子どもが手こずっている場面こそ、成長の種が宿っています。

3.運動場にも立ちはだかる、「身体操作の壁」

身体を動かす機会の減少が招くもの

「できない」の波は、運動面にも押し寄せています。外遊び機会の減少や、近年の記録的な猛暑による屋外活動の制限が、子どもたちの基礎的な身体能力に確実な影を落としています。技術や記録以前に、「身体を思いどおりに動かす感覚」そのものが育ちにくくなっているのです。

運動面で見えてきた、深刻な課題

 転ぶときに手が出ない最も深刻とされているのが、咄嗟の反応の未発達です。転倒した際に反射的に手をついて顔を守ることができず、顔面を直接地面に打ちつけてしまうケースが増えています。これは運動神経の問題ではなく、「自分の体重を腕で支える」経験そのものが少ないことが原因です。
水泳の「準備」ができない「泳げない」こと以前に、水着の着脱(特に濡れた後)、ゴーグルのゴム調整、スイミングキャップへの髪の収め方といった**「身支度」の段階**でつまずく子が少なくありません。プールの授業は、着替えやすい服装管理も含めた「段取り力」が試される時間でもあります。
 縄跳びが結べない・片付けられない 縄跳びが結べない・片付けられない
二重跳びなどの技術以前に、使い終わった縄跳びを「半分に折って、くるくると巻いて、袋にしまう」という一連の作業ができない子がいます。これも給食の例と同様、指先の経験値が直接影響しています。

4.家庭でできる「壁」を乗り越えるための処方箋

特別な習い事に通わせる必要はありません。日常のちょっとした工夫が、子どもの自立を育む最良の練習台になります。

1.「あえて手間のかかる食材」を食卓に週末だけでもよいので、骨のある魚、皮付きの果物、殻付きのゆで卵を出してみましょう。上手くむけずに身がボロボロになっても構いません。それは自分でやり遂げた証です。その小さな経験が、給食の時間に「自分はできる」という自信の土台になります。
2.「待つ」勇気を持つ子どもが何かに手こずっているとき、すぐに手を出さずに「あと3分だけ自分でやってみようか」と声をかけてみてください。自分の力でやり遂げた達成感は、どんな言葉よりも深く自立心を育てます。大人が「待つ」ことは、子どもへの最大の投資です。
3.「支持力」を養う家遊び 転倒時に手をつく力をつけるには、日常の中に「手で体重を支える」遊びを取り入れましょう。雑巾がけや、大人が足を持ち上げて子どもが手で歩く**「手押し車」**が特に有効です。遊び感覚で続けることで、いざというときの反射が自然と育まれます。
4.水泳の授業を想定した「お風呂シミュレーション」夏の本番前に、お風呂場でゴーグルを自分でつける練習や、濡れた身体を自分で拭いて着替える練習をしておくと安心です。「できた!」の積み重ねが、プール授業への不安を和らげます。

5.「できない」を「伸びしろ」に変える言葉がけ

子どもの心に寄り添う、ひとつの問いかけ

給食で失敗して服を汚したり、時間が足りなくて食べ残してしまったり、縄跳びが結べなかったり。そんな日があっても、「なんでできないの?」ではなく、「今日はどこまで頑張ってみた?」と声をかけてあげてください。

できなかった事実を責めるのではなく、頑張ったプロセスを見てもらえた子は、明日また挑戦する気力を持てます。
学校は勉強だけでなく「生活」を学ぶ場所です。できないことがあるのは当たり前…
家庭は、学校で使い果たしたエネルギーを充電し、明日への活力を蓄える場所でありたいものです。

6.「小1の壁」をワクワクに!厚木市の新たな挑戦

「小1の壁」を乗り越えるには、家庭の努力だけでなく、行政の支援や制度の充実が不可欠です。
私は2024年から一般質問等でこの課題を提言し続け、2025年度の検討会設置を経て、2026年度(今年度)から「幼保小連携推進事業」が本格始動しました。

新政あつぎ【意見広告】2024年3月

この事業は、単なる情報の引き継ぎに留まりません。教員間の合同研修や「共通カリキュラム」の作成など、教育の連続性を生む「人のネットワーク」に重点を置いています。

 モデルグループの取り組み1.戸室小 & はやし幼稚園
2.依知小 & さくら幼稚園・依知保育園
3.戸田小 & 相川保育所

これらの園・学校では、入学への期待を高める「アプローチカリキュラム」と、入学直後に遊びの要素を授業に採り入れる「スタートカリキュラム」を連動させ、子どもたちが無理なく新しい生活に馴染める環境を作っています。

自治体として、子どもたちが「自分の力で生きていける」自信を育む環境づくりと、保護者の皆様がゆとりを持って子どもと向き合える体制づくりに、引き続き全力で取り組んでまいります。

入学前に遊びながらやってみよう!チェックリスト

◆ 箸を使って、豆やスポンジを運ぶ遊び(ゲーム感覚で!)
◆ 紙パックのストローを自分で刺して飲む
◆ 自分の靴下や服を「くるっ」と丸めて片付ける
◆ 縄跳びを半分に折って結ぶ
◆ お風呂上がりに、濡れた体で着替える練習をしてみる
◆ 困 ったときに「手伝って」「教えて」と大人に伝える練習(★一番大切です!)

※ 「小1の壁(親の仕事との両立)」と「小1プロブレム(子どもの学校適応)」は別物として考えています


厚木市議会議員:望月 真実(もちづきまみ)

私が考える子育て Vol,4

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